約 730,185 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1215.html
G・L《Gender Less》、それは失う事、狂う事。では、アイデンティティを失い、それでも尚“生きる”事を選択した神姫には、まだ何か失っていない部分、狂っていない部分があるというのだろうか? 否。それは人間になど推し量れる筈は無い。何故ならば、“アイデンティティを設定された人間など居ない”のだから。 G・L ~Gender Less~ 第1章 狂犬 闇、闇。飛、飛、飛、黒。 冬の夜の住宅街に飛び込む、3つの闇。それは3人の武装神姫。2人のアーンヴァルは装甲を黒く彩り、先頭を行くストラーフも【悪魔の翼】で軽快に飛ぶ。 飛来、飛来飛来、着地。開線。 「・・マスター、目標地点に到達」 一軒家の塀に降り立つ闇。ストラーフが無線を繋ぎながら、暗視スコープで周囲を警戒する。 『よし、周囲に誰もいないな? クロト、ラケ、アトロ、予定通りに1階南側の換気扇から進入しろ。今なら2階にガキが居るだけの筈だ』 「了解。以降無線封鎖します」 『期待しているぞ、お前達』 断線。飛、飛、飛。 「「「マスターの、為に!!」」」 MMSの暗部、その一つが犯罪への転用。未だ表面化していないとは言え、それは確かに増加していた。神姫も例外ではない。その為に法による登録の厳正化、機体リミッター、論理プロテクト等が存在するのだが、禁を破るのが人の世の常、そして完全なるプログラムなど存在しないのもまた、世界の常識。 今、不法侵入を試みる彼女達もその産物。違法改造コードによるプログラム改変、そして、“歪んだ愛”に彩られた武装神姫。主の為にと、彼女達は望んで、その手を罪に染める。 分解、解体。 慣れた手つきで換気扇を分解していくのはストラーフタイプの長女アトロ。残る妹達は周辺警戒をしている・・が、末のクロトは暇そうにあくびまで立てる。 「後少しでファンが外せる。警戒怠るな・・特にクロト」 「だあ~ってヒマなんですもん。マスターも言ったように誰も来る訳無いしぃ、ついでに寒いしぃ。ラケ姉さまもそう思うよね?」 「・・・」 クロトの問いにも、ラケは眉一つ動かさず、只黙々と警戒を続ける。同じアーンヴァルタイプと言えど、CSCによって刻まれた“心”はそれ程にも違う。 「あ~もうラケ姉さまもつまんないぃ~! 早く帰ってマスターと遊びたいぃ~!!」 「クロト! お前のその喧しい声が誰かに聞こえでもすれば忙しくもなろうが、そうすればマスターにお叱りを受ける事、判っているのか?」 「は、はいぃ」 アトロの怒号で、クロトはその小さい体を項垂れる。 分解、解体。 「あ~、少し曇ってるな~。お星様、なんにも見えないや。お月様は今新月だっけ?」 分解、解体。 「そう言えば、コレ上手くいったら、マスター新しいパーツ買ってくれるかな? アタシあのうさみみ付けてみたいぃ~♪」 分解、解体。 「ねえねえラケ姉さま、しりとりしない? じゃあアタシからね。え~っとぉ~、わ・・・」 分解、解体・・・止。 「アトロ、いい加減に!・・・」 轟粉砕。 「わぱひゃ!?」 「・・・わぱ・・?」 「・・・・!!?」 緩、落下、崩。 始め、それはクロトのいたずらと思い、また作業も終わりに差しかかっていたのでアトロは無視しようとしていた。 「・・・!!!」 急降下、抱、受止。 だが、無言のまま血相を変えて降下したラケの姿に、彼女は異変と感じ、彼女達の方を覗き見た。 「・・・! クロ・・ト!?」 「ら、ぁ、あらけ、kkkelaaa・・・」 そこにあったのは次女に抱かれた、グロテスクに破壊された三女の姿。頭部は左半分が潰され抉られもぎ取られ、左の乳房ごと腕はどこかに吹き飛んでいた。当然ウイングも跡形もなく、そして、壊れた言葉も途切れ、彼女は・・・ 崩、壊、停止。 「・・・・っ!」 「クロト!!!」 彼女は死んだ。 「GuaaaaaaaaaaaaaooNn!!!」 轟、咆吼。 「・・何!?」 低く響く獣のような声。何処か歪な音。悲しみも止まぬままに、その咆吼の先を見るアトロ。其処には影。小さい影。塀の上に立つ、自分達と同程度の影。 「!!?」 クロトの亡骸を下ろしたラケも、その物体を望む。 微、明。月光。 雲間からの光が、その物体の姿を明確にする。それは確かにMMS、神姫だ。識別は・・・どうやらハウリンタイプだった。しかし。 「Guuu・・・」 しかしその四肢は見た事もない増加パーツで肥大化し、尾はグロテスクに長く太く、塀の向こう側に垂れ下がっている。そして、顔には、表情も見えぬほどの、分厚い鉄仮面。 「な・・に・・あれ・・・?」 アトロは、か細く、声を漏らす。気丈な彼女が、初めて、少女のように。 目次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1322.html
<閑話休題:とある種子の記憶> 私は武装神姫だと皆が言います。 ですが、私は外の世界には出られません。 データの中でしか生きられず、本当に神姫としての身体があるのかどうかすら自分では確認する術を持たない私は、本当に神姫なのでしょうか? 私は・・・ はじめまして、私の名は種型神姫ジュビジーの草雷と申します。 マスター定義が未設定状態のままな為に、どなたが名付けてくださったのかは存じあげませんが、蕾をイメージした名前だそうです。 少々特殊な仕事をさせていただいておりますが、一般的に普及している種型と差異はございません。 ただ一つ、現実世界で動き回ることが出来ない点を除けば、ですが。 お聞きした話によると、私の身体は外の世界で眠ったままだそうです。 ”咲かない花はない” よくあるフレーズですが、芽の出ない種はずっと土の中に埋もれたままなのですね。 土があり、光が射し、水を与えられても、種が偽物なら芽は出ません。私もそういう事なのではないでしょうか。 息抜きの為という名目で実施されるバーチャルバトル。私からすれば唯一他の神姫と関われる貴重な時間です。 今日もデータのみで構築される世界で偽物の空を見上げ、本物と呼んで良いのか判らない力を振るいます。 しかし、相手の方々はいつも不満そうな表情でログアウトされていくのです。 やはり私は普通の神姫とは何処か違うのでしょうか? この事を質問してみると、謝られてしまいました。それ以降は口に出しておりません。 今日から数日、私の起動を請け負ってくださってる方がいらっしゃらないそうなので、その間お休みさせていただくことになりました。 今度目が覚めた時には、外の世界を体験する事が出来るでしょうか。 師匠と弟子
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/736.html
私を動かすのは闘志 マスターに命令されたからやるのではない 私自身が闘いを望むから 私は征く 鳳凰の翼の一翼として 鳳凰杯編 「蒼い翼」 差し込む日差しは青白い まだ奥様は寝ている様だったが、正直高揚していた私は充電もそこそこに起き出していた 高揚している・・・か 理由は一つ、間近に迫っている鳳凰杯だ 結局、私は選手として参加する事に決めていた 奥様と、この家に住む他の神姫も一応会場までは足を運ぶつもりの様だが、それは同時に開催される諸々のイベントの為だ 私は・・・そういう所では心からこの家の住人達と判りあう事が出来無い 否、それはある意味ではマスターにしても同じかも知れない 「神姫に人権を」と叫び続ける私のマスター川原正紀・・・そんなマスターだからこそ私の好き勝手にやらせてくれているのだろうが、同時にその行動原理に埋め様の無い私とのギャップを感じる 武装神姫は武装神姫・・・人ではないのだから人権等に意味は無い これが私の今の所のスタンスだった 人が命懸けで闘うと、悲しむ人が多いが、私達武装神姫は闘う為に作られたのだから、少なくとも戦う事に関しては、誰からも何も言われない 私達が私達らしくある為に必要なのは、人と同じ様な権利等では無い様な気が、私はずっとしていた 「つまりそれは戦士が戦士らしくある事の権利にも似て・・・か?」 馬鹿馬鹿しい。戦士である事に権利等要らない・・・自分が戦士らしくあろうとすればそれで良い 闘争を望む人々の熱狂と視線の中で闘う事が幸福だ 勝利の感動に酔い痴れる事が祝福だ 敗北の苦痛と屈辱に塗れる事が必要だ 何よりも幸いな事に、我々には戦場が与えられているではないか・・・! それで充分だった 「いかんな・・・考え過ぎだ。誰かに似てきたかな?」 私に必死になって闘う理由を問うて来た神姫の顔が浮かぶ 私の理由は、今はもうただ「戦士でいたいから」に絞られていた 闘いたいから闘う、そして戦う場は用意されている・・・闘う術も武器もあり、勝利の栄光もある それだけで既に私達は、人間より余程幸福だとすら思える 「・・・ん・・・おはよう御座いますクイントスさま・・・」 「ん?あぁ、おはよう、ヌル」 窓際に腰掛けた私の姿が、今の彼女にはどう見えただろうか? カーテンを揺らす風が、どこか熱い息吹を孕む春だった ぎしゅっ!ぎぃんっ!! 白刃が、閃く ほう、受けたか・・・真っ二つになると思ったが・・・ 受け止められたそこを支点に、私の体が宙を舞う・・・やはり彼女が、才能面では最高だ だがまだまだ・・・それを生かし切れていない 空中で姿勢を変え、落下ではなく着地の構え・・・襲い来る「魔女の剣」・・・そんな見え透いた攻撃にはあたってやれんな 私が、空中で、回避運動が、出来無い等と、何時言ったのだ?エルギール! エルギールの防剣を支えに、腕力で再跳躍。空中で太刀を振り、魔女の剣を迎撃、無事着地には成功する 着地点に打ち込まれる銃弾・・・『ストリクス』か。馬鹿め、私を狙う時は弾幕を使えとあれ程言っておいたのに、まだ「ワンショットワンキル」等と言う夢物語を追いかけているのか? ぎぃん 銃弾を受け止め、両断。そのまま刀身を跳ね上げて再び迫る「魔女の剣」を迎撃する 狙撃点の割れた狙撃手と、距離を取られた柔使い等、どうとでもなる 爆散する「魔女の剣」・・・面白い武器ではあるがその耐久力ではな 再度打ち込まれる銃弾・・・狙いが甘過ぎる。受ける迄も無い 掴みに掛かって来たエルギールを逆に掴んで、その力を利用して振り回す。 もう少し『待ち』に徹する事を覚えろ、余りにもこらえ性が無さ過ぎるぞ・・・エルギールの体に三発目が着弾する 狙撃がそんなに好きならミサイルで蟻でも射つのだな!凄まじい長距離と凄まじい小目標物だぞ 大体 私程度の動きを負えない様では 本当に高速戦闘に特化したアーンヴァル等相手では 射つ前にやられるぞ!! 2発射って外してしまった時点で、ストリクスは私に射撃の呼吸を読まれるという愚を冒している・・・これでは本来サイドボードを導入する意味も薄いが、今回は練習だ、使っておく事にしよう 「エンジェール!カームヒアーー!!」 ダッシュしながら叫ぶ。同時に転送されて来るサイドボード、バーチャルの空気に溶けて消えるエルギール 気に入りの濃紺のマントが消滅し、代わりに装備される白い翼と長銃 別に取り立てて珍しいものでもない。加速のみが目的の背負い型のダッシュブースターと、飛翔のみが目的の羽根付きグリーヴだ 右腋にホーンライフルという名の槍を構えて空中から殺到する羽根付き騎士か・・・使い古された絵面で面白くも何とも無い 両脚を振り回してジグザグに飛びながら、ダッシュブースターを目一杯に吹かす・・・ようやく四発目。仰角に修正するのが遅過ぎる 場所は既に割れている、あとは普通に狙いをつけて ぱすんぱすんぱすん 終わった 別にそんな長大でいかつい砲を装備せずとも、少し工夫してやれば市販ライフルでも充分反撃されにくい攻撃は可能だ・・・「ツガル」が何の為にこういう装備をしているか考えた事も無かったのか? ジャッジマシンの勝利宣言を、私は殆ど聞かずにログアウトしていた 「随分厳しく言ったじゃない?相当頭にきてたわよ?ストリクス」 「頭に来てくれないと困る」 兜を腋に抱えつつ、大げさに肩を竦める 「何でよ?」 「ストリクスがもっと技術を磨いてくれないと、私は誰から狙撃の技術について学べば良いんだ?」 噴出すエルギール。割と本気で言ったのだがな 「何それ?セカンドランカーの大物に習えば良いじゃない・・・ホント貴女ってちぐはぐだわ」 「気心の知れた相手から学んだほうが気が楽に決まっている・・・それにストリクスは堅実で努力家だ。やればもっと伸びる筈なんだよ」 「いっその事キャロねえやヌルにならってみたら?」 「キャロは狙撃は苦手なんだ・・・当然ヌルじゃ話にならん。むしろあの子はもっと蹴り技の訓練をだな・・・」 「あぁはいはい。ホントもうお腹痛いわ。神姫なのに笑い死にとか勘弁して欲しいっての」 相手が私だろうと下位ランカーだろうと同じか・・・私はこの子のそういう所がかなり気に入っている 「大体皆私を褒め過ぎるんだ。天才とかゆらぎとか、そんなものは大昔の負け犬が考えた逃げ口上だろうに」 「それ、あいつにも言ってたわね、もう耳にタコよ。婆臭い!」 「楽しそうだね」 団欒風景に割って入る十倍ストラーフ・・・じゃない神浦 琥珀 「注文の品、出来たよ」 言いつつ神姫大の黒いケースを三つ、私の前に並べる 「これはマイスター、ありがたい」 言いつつ早速開けて見る 「これは・・・」 出て来るのは計4振りの刀剣類だ ギミック付きの鞘に収められた厚手のダガーが二振りに、私が今使っているものよりやや柄の長い日本刀が一振り、そして「コルヌ」にはやや及ばないものの、かなりの長さと幅を持つ青錆色のロングソードが一振り 「密着戦での防衛力を重視した『ディフェンダー』と、少し居合いに使う事も考慮した『神薙Ⅱ』・・・そして君の音速剣を無制限に放てる耐久力の『鳳凰』だ」 『鳳凰』を手に取り一度振るう・・・心強い重みと重厚な外観が、強烈な破壊力と強度を予感させた 「振ってみて良いだろうか?」 「構わないけど、店の外にしておいた方が良いと思うよ」 相槌だけ打って店の裏手に回り、大き目の小石に向かって振り下ろす 硬い音は、両断の手応えより僅かに遅れて聞こえた 刃毀れは・・・無い 減衰したインパルスが、数十メートル先の電柱の張り紙を揺らしたのが確認出来た パワーロスが大きいが・・・まぁ慣れでなんとかなるだろう 「少し先太りになってて小回りが利きにくいけど、結構刃は薄いから、なるべく鍔迫り合いはしないでね・・・まぁ並みの武器には負けやしないと思うけど」 「パーフェクトです。マイスター。有難う御座います」 「『クイントス』お墨付きとあったら、ここいらじゃそれだけで凄い箔が付くからね。売名行為だよ。あんまり礼を言われると心苦しいな」 長大な割りに直線の刀身を鞘に収めるのは難儀したが、腰に佩いて見ると「コルヌ」よりは様になっている・・・それでも少し長いか?マントとあわせるのが難しいな 「鳳凰杯、あさってだね」 「あぁ」 「君みたいなのに僕みたいなのがこういう事言うのもなんだけど、頑張ってね」 「マイスターのこの剣と、私の誇りに賭けて!無様な闘いは曝しません」 一息に・・・抜けた。『鳳凰』を胸の前で両手で構え、掲げて見せる 青緑色のつやの鈍い刀身が、夕日に煌いていた 鳳凰杯・まとめページ 剣は紅い花の誇り 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2599.html
第3部 「竜の嘶き」 「ドラゴン-4」 2041年10月30日 22:20 天王寺公園神姫センター 第3フィールド森林ステージ 森林ステージの小川を闇夜に紛れ低い重低音を奏でながら、3隻の巨大な灰色の塊が水面スレスレを航行する。 チーム名「あああああああ」 □重装甲戦艦型MMS 「ドセットシャア」 SSクラス 二つ名「キャノン・ワールド」 オーナー名「細田 勇」♂ 27歳 職業 統合商社営業マン □重装甲戦艦型MMS 「スーザン」 SSクラス 二つ名「アイアン」 オーナー名「西野 公平」♂ 28歳 職業 統合商社営業マン □重装甲戦艦型MMS 「ウォース・パイト」 SSクラス 二つ名「オールド・レディ」 オーナー名 「和田 真由美」 ♀ 29歳 職業 銀行員 対岸の青チームは何が何でもA飛行場を最悪使用不能にさせたかった。その為には陸戦MMS部隊を安全に対岸にまで送らなければならない。しかしすでに制海権は赤チームに奪われつつある上に周辺の味方MMS航空隊は連戦続きによって激しく損耗していた。その為、A飛行場からはいつでも敵機が出撃できる状態であり、このままでは輸送艦型MMSによる増援をしても撃沈されるのが目に見えていた。 味方MMS航空隊は頼りにならない。テンペスタ使いの女子高校生たちは明日までテスト中で使い物にならない。だが輸送を成功させるには何としてもA飛行場を一時的にも無力化しなければならない。しかしその為には味方MMS航空隊の援護が必要。だが航空隊は使えない。この無限のループを打破すべく、青チームは最後の切り札を使う事にした。 当時、大規模バトルロンドの常識であった航空MMSの次に攻撃範囲の広い武装神姫。それは旧世紀の主力兵器、戦艦をモチーフとした戦艦型MMSの一群であった。 青チームのオーナーたちはA飛行場に対し、戦艦型MMSによる艦砲射撃作戦を立案した。この作戦は電撃作戦でなければならないのだ。なぜならば攻撃に成功しても、撃ち漏らした敵機がすぐさま迎撃に向かってくるからだ。 戦艦型神姫の攻撃力は確かに最強クラスだが、速度は低速。逃げ切る事は難しい。迎撃されればいくら最強クラスの攻撃力を持っている戦艦型MMSといえど損害は避けられず、最悪沈没という事もありえた。圧倒的な力の象徴である戦艦型MMSを失う事は、青チーム全体の士気にも関わる。その為に白羽の矢が立ったのがこの3隻であった。 カタリナ社製の重装甲戦艦型MMS「ヴィクター級」 速度は鈍足ではあるが、分厚い装甲と強力な砲撃力を持つ重装甲戦艦型MMSにはもってこいの作戦であった。さらに同型が3隻あるといのもひとつの理由でもある。 もし投入した戦艦型が最悪沈められても、代わりがいるからである。数隻の同型で艦隊を組み闇夜に紛れて殴りこみを仕掛ける。 これらの理由も踏まえ、青チームはヴィクター級重装甲戦艦型神姫3隻による艦砲射撃作戦「A飛行場艦砲射撃」を提示した。 かくして、青チームは作戦を発動したのだった。 ゴオオオンゴオオンゴオン・・・ 低いエンジン音を唸らせながら小川を進むドセット。 ドセット「はー、大阪城公園からはるばる天王寺公園まで環状線伝ってきたけど・・・なんともなァ・・・」 スーザン「遠距離からの艦砲射撃かー、メンドクサイなーいつもの定期便みたいに決まったルートで護衛引き連れて爆撃する方がまだマシだよ」 ドセット「本当は俺たち、戦艦型神姫は同じ戦艦型同士で真正面で撃ち合いするのが筋だけどな」 パイト「まあ、どっちでもいいけどー、とりあえずバカスカ撃ちまくればいんだろ」 スーザン「この作戦、うまく行くと思う?」 ドセット「前例あるし、余裕だろ」 パイト「前例って?」 ドセットたちはべらべらとおしゃべりしながら、小川を下る。 ドセット「今からええと、ちょうど100年前だな!太平洋戦争中の1942年10月に行われた日本帝国海軍によるガダルカナル島のアメリカ軍飛行場・ヘンダーソン基地への艦砲射撃の作戦があったんだ。艦砲射撃部隊は金剛級の高速戦艦を主力とした作戦だったらしいなー」 スーザン「1942年の10月?今は2041年の10月だぜ!ちょうど一世紀前じゃねか!!」 パイト「前例って100年前の俺たちのモチーフの実績事例じゃねえか!ふざけんな!あーーーどおりでなんかマスターたちが妙に作戦をサクサクって立てるからおかしいなーと思ったんだよ!」 スーザン「だいたいよー、こんな真っ暗闇の中で撃って当たるのかよ!照準はー」 ドセット「心配するな、コウモリ型が照明弾を撃って、場所を教えてくれる。砲撃はレーダー射撃と三角法を用いたアナログ光学測定の併用な」 スーザン「めんどくせーし古臭せーよ」 パイト「GPS使って位置割り出しの方がよくね?今ならネット使って衛星とリンクできるけど?グーグルアースで誤差、3センチまでいけるぜ」 ドセット「アホォ!なにいうとんねん!衛星からの画像はアテにならへんで!画像処理されてめちゃくちゃなところに落ちんで」 パイト「けっきょくアナログか!!!あほくさ」 スーザン「めんどくせー」 ドセット「艦砲射撃任務も戦艦型神姫の十八番だ!連中に俺たちの火力を見せ付けてやろうぜ」 スーザン「めんどくせーから俺帰りたいんだけど?」 パイト「アナログアナログアナログクマー♪」 ドセット「黙れ」 2041年10月30日 22:30 天王寺公園神姫センター 第3フィールド森林ステージ A飛行場 リイン「本当ですか!?」 飛行場の片隅でリインたち、ドラッケン部隊が集まって盛り上がっている。 シャル「そうだ、マスターたちと話し合って、ついにテンペスタ対策に装備が改変されることになった、重い増加装甲とロケット弾の搭載をやめてオーバードブースタを代わりに装備する。今までの倍の高度で航空性能をUpさせるんだ」 ライラ「あれがくれば、テンペスタなんかバラバラにできるぞ!それに前にオマエのやられた仲間の整備が終わって部隊再編でおまえを小隊長に推薦しておいた」 リイン「シャル・・・ありがとう」 セシル「よかったな!リイン」 エーベル「明日は忙しくなるな」 ヒュウウウウンン・・・・パァアアンン・・・ 真っ暗だった飛行場が明るくなる。 シャル「!!」 空を見ると照明弾が明々と燃えてゆっくりと夜空を照らす。 エーベル「照明弾だ、いつものコウモリ型が落としたな」 闇夜の小川に静かに浮かぶドセットは目標の飛行場の位置をじーと見つめる。 その時、飛行場の方角から光がぱっと湧き出る。光を見詰め、ドセットはニヤリと笑みを浮かべた。 それは、計測用にコウモリ型が投下した照明弾だった。 そしてそれは艦砲射撃開始の合図だった。 ドセット「合図だ」 スーザン「照明弾、確認!」 ドセットはゆっくりと砲塔を動かす。主砲はわずかに方向・仰角を変え、さらにもっと撃ちやすい場所に移動する。 ドセット「よォーーし、では始めようか・・・全艦、撃ち方用意―」 チカチカと発光信号で合図をするドセット。 スーザンもパイトも軽口をピタっと止めて、砲撃に移る。 ドセット「撃ち方ァーーーはじめッ!!撃ッ!!!!!」 ドゴオオオオオンンドッゴオオオオオオオン!! ズン・・・ズシン・・・ドオン・・・ ライラ「なんだ?砲台型神姫か?」 遠くの方で雷のなるような音が聞こえ、滑走路からはずれた所に砲弾が着弾し爆発する。 セシル「いいや、ありゃ艦砲だな」 セシルは目を細めて砲弾の着弾位置を見る。 ガオオオン・・ズズウム・・・ドゴオオオオン・ズドム・・・ じわじわとシャルたちに向かって着弾が近づく。 シャル「まずい!!射角が合ってきた!!」 リイン「来るぞ!!」 シャシャシャシャシャシャムシャムシャム・・・ エーベル「逃げろォ!!」 ドッガッガッガガアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!! 飛行場で待機していた数十機の武装神姫が艦砲射撃の砲撃に飲み込まれて一瞬でスクラップに変わる。 ズッガアアアアアアアアアアアアアンンンンン!!!!!ボオゴッオオオオオン!! ライラ「うっわああああああああ!!滑走路が!」 地面を抉るように深く砲弾が突き刺さり大爆発を起こして神姫や武装を巻き込み大爆発が起きる。 リイン「これは戦艦型MMSの艦砲射撃だ!」 ライラ「派手ですねー」 セシル「うひいい!恐ろしい、この間の仕返しかァ!?」 シャル「これは挨拶みたいなものだ、明日はテンペスタの連中が出てきて忙しくなるぞ・・・」 ズンズズン・・・ズウム・・・ドン・・・ズズウン・・・ 12:50の「撃ち方・止め」までに、重装甲戦艦型MMSの艦隊は全艦合わせて計966発の艦砲射撃を実施した。この艦砲射撃により、A飛行場は火の海と化し、各所で誘爆も発生した。 赤チーム側は、96機あった武装神姫のうち、54機が被害を受け40機が完全に撃破され、燃料タンク、弾薬庫も炎上した。滑走路も大きな穴(徹甲弾による)が開き、A飛行場は一時使用不能となった。 もちろん、戦いはこれで終わるはずもなく、更なる激戦が後日控えていた。 To be continued・・・・・・・・ 次に進む>「ドラゴン-5」 前に戻る>「ドラゴン-3」 トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/78.html
あらすじ 無気力気味な青年、藤丘遼平の元に誤配されてきた悪魔型武装神姫。 ほんの少しの偶然とほんの少しの共通点が織り成す大きな変化…。 運命なんか、蹴っ飛ばせ。 著 不良品オーナー キャラクター紹介 オリジナル設定 ストーリー ☆第1~8話はSSまとめに掲載されているものに加筆修正しております。 ☆それ以外でも作者の気分次第であっちこっちに加筆修正されます。 詳しくは更新履歴を。 ☆コラボレーション大歓迎。 キャラはまだ多くないですが遊んでやってください。 第01話 「邂逅」 第02話 「開始」 第03話 「呼名」 第04話 「武装」 第05話 「歴史」 第06話 「世論」 第07話 「隻脚」 第08話 「初戦」 第09話 「友人」 第10話 「予約」 第11話 「一歩」 第12話 「相手」 第13話 「姫君」 第14話 「制限」 第15話 「騎士」 第16話 「防壁」 第17話 「博打」 第18話 「談話」 今日 - 昨日 - 総合 - コメントフォーム(ご意見・ご感想など、どしどしカムカム) 各話の最後に、次の話へ飛ぶことが出来るようにしておくと、見やすくて便利ですよ。 -- 名無しさん (2007-07-03 20 25 43) 第09話からですが、前話・トップページ・次話に飛べるようリンクを貼りました。 ご指摘サンクスです♪ -- 『不良品』オーナー (2007-07-10 20 02 26) 良い話ですね。少しマスターを見習いたくなりました。 -- 未来のオーナー (2007-08-07 16 42 54) 続きはまだですか? -- 名無しさん (2010-06-16 15 56 01) 私、この作品で神姫にはまったんですよねー。 -- y (2010-11-10 20 16 29) ・・・・待てど待てど続が出ぬのは悲しい物だ。 -- 咆哮伯爵 (2012-06-02 23 17 30) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2270.html
PROLOGUE 『 もうやだこんなマスター 』 西暦2036年。 第三次世界大戦もなく、宇宙人の襲来もなかった、 2006年現代からつながる当たり前の未来。 その世界ではロボットが日常的に存在し、 様々な場面で活躍していた。 「あの、マスター?」 「ん、どうしたトイレか。 そういうことはバトルの前に済ませておけと――」 「違います! 神姫はトイレなんて行きません! 相手の武装を見てください!」 「武装? ――ふむ、大剣を持っているな。 一応ハンドガンも用意はしているようだが、どう見ても近接格闘型だ。 エル、ここは距離を取っていけ」 「なるほど。 で? どうやって距離を取ればいいんですか?」 神姫、それは全長15cmの フィギュアロボである。 “心と感情” を持ち、 最も人々の近くにいる存在。 多様な道具・機構を換装し、 オーナーを補佐するパートナー。 「どうやってもなにもあるもんか。 近づかなければいいだけだろ」 「なるほどなるほど。 で? 距離を取ったまま、どうやって攻撃すればいいんですか?」 「お前のその武器は飾りか? 投げるなり接近するなりして攻撃しろ」 「武器! 今 『これ』 を指して 『武器』 と言いましたか!」 「それは俺の財力をバカにしているのか? 確かにまともな装備を買ってやれないのは悪いと思っている。 だがそれでもお前に勝利を勝ち取って欲しくて、その武器を選んだんだぞ」 「はぁ……いいですかマスター。 これは武器じゃなくて 『つまようじ』 です」 その神姫に人々は、 思い思いの武器・装甲を装備させ、戦わせた。 名誉のために、強さの証明のために、 あるいはただ勝利のために。 「投げて良し。 刺して良し。 遠近どちらにも対応できるぞ」 「すぐ折れます! 神姫パワーと神姫ボディを舐めないで下さい!」 「はっはっは。 そういうことならほら、200本あるから予備はいくらでもあるぞ。 心ゆくまで折ってくれて構わん」 「どうして……どうして私はこんなマスターに……」 オーナーに従い、武装し戦いに赴く彼女らを、 人々は 『 武装神姫 』 と呼ぶ。 NEXT RONDO 『 どいつもこいつも神姫マスター 』 15cm程度の死闘トップへ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2437.html
第2部 「ミッドナイトブルー」 第3話 「night-3」 西暦2041年 5月21日 22:00 『大阪府 大阪市 鶴見緑地センター店』 店外の外では露天式のショットバーが置かれ、何十人かのオーナーと重武装の神姫たちがガヤガヤと集まって夕食や酒を飲んで騒いでいた。 バーの中心には、丸いテーブルが置かれ、真ん中でシャレた椅子に座ったヴァイオリン型神姫が演奏をし、深くスリットの入った紅のドレスを着たセイレーン型が歌を歌っていた。 □ヴァイオリン型MMS 「シャレニ」 Bランク □セイレーン型MMS 「マリー」 Aランク オーナー名「奥村 優」♀ 24歳 職業 ショットバー店員 心地よいヴァイオリンの音色とマリーの歌声に聞きほれている神姫や、まったく意に介せず、ガツガツとアールコールや飯を喰う神姫もいたり、さまざまだ。 戦闘爆撃機型「へっ!!なんでえ・・・何が夜帝だ、調子に乗りやがって、俺がぶっ潰してやるよ」 ワシ型「よく言うぜ、びびって今日のバトルロンドは参加してねえくせに」 天使型がサラミを口に運び、クチャクチャと噛み千切る。 天使型「あれだろ、灰色艦隊の成金連中が半滅した話だろ?ざまあねえぜェ」 コウモリ型「そのどて焼き、俺もらうな」 砲台型がビールをごくごくと飲む。 砲台型「ゲップ・・・今日は仕返しに、数十体の神姫を呼んで反撃するらしいなー」 戦闘機型「やられたらやりかえすってか?」 ワシ型がにやつく。 ワシ型「目には目をっ!!!歯には歯をっ!!!」 戦闘機型「これはけじめだな」 コウモリ型がどて焼きにぱくつく。 コウモリ型「はふはふ、穏やかじゃないねーーー」 戦闘爆撃型がスコッチをぐいっと飲む。 戦闘爆撃機型「バカヤロウ!俺たちゃ、武装神姫だぜ?伊達衣装に身を包んでよォ・・・戦場を刀や銃持って駆け回って暴れまくるんだ!!元から穏やかな身分かよ」 天使型がなんこつの唐揚げを口に含んで噛み砕く。 天使型「ぎゃはっははっ!!!ちげえねえ!!」 砲台型がごっごっとビールを飲み干すとガンとテーブルにジョッキを叩きつけて叫ぶ。 砲台型「武装神姫、万歳っーーー戦友(カメラート)!!」 一緒のテーブルに座っていた神姫たちもジョッキやグラスを叩き割って叫ぶ。 天使型「戦友(カメラート)!!」 スコッチをぐっと平らげる戦闘爆撃機型。 戦闘爆撃機型「くそたっれ!!こわかあぁねえぞ!!このヤロウ!!」 戦闘爆撃機型は副腕に装備された機関砲をくいっと空に向けるとぶっ放す。 ドドドドドドドッ!!! バキバキャン!! 照明の電球に弾丸が当たり、火花がまい散る。 別の席で酒をたしなんでいたテーブルの神姫たちに火の粉が舞い散る。 剣士型「あっち!!!」 騎士型「おい!!!てめえェ!!!アブネエだろが!!」 戦乙女型「てめえ!!!ぶっ殺すぞ!!クソヤロウが!!」 悪魔型「FUCK YOU―!!」 悪魔型がぶんっと副腕の出力を上げグラスを投げつける。 ガッシャーーーン!! 天使型のバイザーにグラスがぶち当たる。 天使型「ぎゃあああ!!いってええ」 ワシ型「てめええ!!」 戦闘爆撃機型「やりやがったぁ!!クソが!!」 剣士型がドカッと椅子を蹴り倒す。 剣士型「なんじゃぁ!!やんのかワレェ!!」 騎士型「このボケェが!!いてまうぞ!!コラ!!」 騎士型がシャリンと剣を抜く。 戦闘機型「抜きやがったな!!このアホンダラぁ!!」 戦闘爆撃機型がドンガラガッシャーンと机をひっくり返す。 戦闘爆撃機型「なんやッ!!!やんのかワレェ!!!なめんなや!!」 コウモリ型「ああーーもったいない」 砲台型がビールを投げつける。 砲台型「アホ!」 悪魔型「表出ろやッ!!!怖いんか!!ああぁ!?」 戦闘機型「上等じゃ、このヴォケ!!」 剣士型が唾を吐く。 剣士型「ぶっ殺してやるさかいな、あああ、殺しちゃる」 戦乙女型「キャハ!!うへっへへへへへ、へあッ」 戦乙女型が涎をじゅるりと飲み込む。 他のテーブルの神姫やオーナーがけげんな顔で騒ぐ神姫たちを見る。 花型「なんやなんや!」 丑型「喧嘩や!!」 種型「オー怖い怖い」 オーナーA「ちょっとなんだなんの騒ぎだ」 オーナーB「おい、やめろよ」 忍者型「やれやれッ!!!ぶっ殺せ!!」 武士型が口笛を吹く。 ヒュウーーーー♪ チーム名「からしマヨネーズ風味 ピザ」 □剣士型MMS 「ノロヴァ」 Aランク □騎士型MMS 「バートリー」Aランク □戦乙女型MMS「オタリア」Sランク □悪魔型MMS 「ニパラ」 Sランク VS チーム名「カーテン・レールのストッパー」 □戦闘爆撃機型MMS 「マレズ」 Sランク □戦闘機型MMS「カグラ」 Aランク □天使型MMS 「レコア」Sランク □砲台型MMS 「ルーシ」Aランク ショットバーの前で完全武装の神姫たちが騒ぐ。 マレズ「ぶっ殺してやる」 オタリア「けひ、けっひいッ!!」 バートリー「調子に乗るなよ、コラ」 ???「主砲、撃て」 ズンズズズン!!! 上空から青白いレーザーが騒ぐ神姫たちの真ん中に着弾する。 ルーシ「うはっ!!」 ニパラ「アブネエ!!」 レコア「な、なんだぁ!!」 上空を見上げると、低いエンジン音を鳴らしながら数隻の戦艦型神姫がゆっくりと降下してくる。 ゴーンゴーンゴーーン・・・ マレズ「せ、戦艦型神姫!?」 バートリー「灰色艦隊の生き残りか!」 野木がすっと手のひらを指す。 手のひらの中には黒ずくめの軍服を着た将校型神姫がいた。 ナターリャ「ふん、バカ共が・・・力が有り余っているようだな」 レコア「な、ナターリャさ、さん」 ノロヴァ「ななんのようでしょうか!?うへっへ」 急にヘコヘコと大人しくなる神姫たち。 ノザッパ「けっ・・・コメツキムシかよ、へこへこ媚びやがって」 マキシマ「ノザッパ黙れ」 ナターリャ「そんなにバトルしたいなら、俺がバトルの場を用意してやろうか?」 マレズ「とーー言いますと・・・」 ナターリャ「今日の夜12時に、例の神姫が出没する。貴様らも出ろ」 ニパラ「ちょ・・・ちょっと待ってくださいよ」 オタリア「うひひひ、それって夜帝のことですよね」 ルーシ「勝てっこないですよ、ムリですよ」 ナターリャ「指揮は私が取る。無理だと?」 ルーシ「い、いえそういう意味では・・・」 ナターリャ「これはお願いではない、命令だ・・・私の言っていることが分かるな?んん?」 重巡洋戦艦型神姫のヴィクトリアが砲門をマレズたちに向ける。 コオオオオオン・・・ マレズ「は、はひ!!さ、参加しますよ!!なあオマエラ」 ニパラ「ナターリャさん、へっへへもちろんでっせ」 ルーシ「あうあうあー」 ナターリャ「よし、では1時間後に噴水広場まで集合。さっさと貴様らのマスターを呼んで来い!!」 マレズ「は、はひ!!」 ノロヴァ「え、えらいこっちゃ」 ワラワラと散る神姫たち。 野木がナターリャに囁く。 野木「おい、いいのか?こんなバカな連中で・・・」 ナターリャ「勤勉で優秀なものは参謀にしろ 怠惰で優秀なものは指揮官にしろ 怠惰で馬鹿なものは兵隊にしろ 勤勉で馬鹿なものは即座に銃殺にしろ」というハンス・フォン・ゼークト の軍事組織論を知っているか?」 野木「はあ?」 ナターリャ「駒はバカを使うに限るってことだ。常識だろ?」 野木「・・・・あんたには負けるよ」 野木は肩をすくめる。 チカチカと、湖の向こうから発光信号が光る。 ノザッパ「おッ!!マスター!!来ました!!さっきメール送った奴です」 野木「来たか」 ナターリャが双眼鏡で湖を見る。 ズズズズズズ・・・・ 大型の航空母艦型神姫が真っ暗な湖を併進する。 □航空母艦型MMS「ツラギ」 SSランク 二つ名「アタックキャリア」 オーナー名「金川 登」♂ 40歳 職業 模型店長 航空母艦の上には、数機の武装神姫が乗って手を振っている。艦橋ブロックからチカチカと発光信号が流れる。 ノザッパ「ツラギより電文、ワレ ツラギ ワレ ツラギ 」 ナターリャ「・・・ノザッパ、電文を流せ」 ノザッパ「は?」 ナターリャ「到着を歓迎するとな」 野木「近くの模型店の店長の航空母艦型神姫「ツラギ」だ。20機くらいの神姫なら余裕で搭載できる。内部は各種通信設備を完備、CIC(戦闘指揮所)付きの贅沢な神姫だ」 ナターリャ「うむ」 野木「役者がそろったな。この戦力で絶対勝てるのか?」 ナターリャ「世の中には絶対というのは存在しないが、限りなく近づけることは可能だ」 野木「へらず口を」 ナターリャ「艦載機の情報を」 野木がぴっと携帯の画面を照らす。 野木「腕利きの神姫を集めた。クセの強い連中だがな」 ナターリャは一瞥する。 ナターリャ「ふっ・・・構わんよ」 マキシマがツラギの横につく。 マキシマ「よお、ツラギ久しぶりだな」 ツラギ「マキシマ、こんな夜遅くに呼び出すってことはただごとじゃないですね」 マキシマ「派手に行こうぜ!マスターは?」 ツラギ「もちろん、後から来ますよ」 マキシマ「頼むぜ、今日の得物は大物だぞ」 野木は湖の桟橋に立つ。 野木「時刻は22:30・・・あと、1時間半か・・・」 ナターリャ「30分後にみんなを集めて作戦会議だ。とは言っても作戦と呼べるようなものでもないがな」 野木「お手並み拝見と行こうか」 To be continued・・・・・・・・ 次に進む>・第4話 「night-4」 前に戻る>・第2話 「night-2」 トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/615.html
剣は紅い花の誇り 用語解説 「槙縞玩具店」 田舎の玩具店 武士達が住んでいる町の中で唯一、武装神姫のバトルが行える店である 店員は本来、皆川と店長の二名、時々店長の娘も手伝っていたらしいが、現在その娘は失踪しており、店長は恐らくそれを探す間皆川に店を任せているものと推測される 「槙縞ランキング」 「槙縞玩具店」に集まる神姫の間で自然発生した地元リーグであり、順位は皆川達がサードのレギュレーションに併せて評価したものの模様 基本的にバーチャルバトル ランカーは華墨、ヌルを含めて初期で21人。強さのレベルには相当なばらつきがあり、特に、一位のクイントスはセカンド中上位級の実力だが、17位以下はエルギール曰く「通常神姫に毛が生えた程度」らしい 傾向として、本来の製品の属性を半ば喪失した様な神姫が多い(合気めいた技を使うジルダリアの『エルギール』や、最早素体が何であったのかを推し量る事にすら意味が見出せない変形MS神姫の『ズィータ』、どんな距離でもほぼ万能に闘える上に、公式のパーツが一切使われていないアーンヴァルの『リフォー』等・・・) 皆川が店長代理になってから、年一回だった「チャンピオンカップ争奪戦」の開催は年二回に増えており、その他イベント大会も多数催されている 「ナイン」 「槙縞ランキング」一桁ナンバーの9人のランカー達を総称して使われる(厳密には、『クイントス』は別格扱いで、それ以外の8名を指して使われる事が多い) セカンドランカーが多数含まる事、マスター自作の改造武装や強化武装を施されている者が多く、現時点の「ナイン」である『ジルベノウ』『リフォー』『ズィータ』の武装には公式パーツが一切装備されていない 「ナインブレイカ-」 「槙縞ランキングチャンピオンカップ争奪戦」の変則的なルールによって、ランキング二桁以上のランカーは全て同列に扱われ、その中で勝ち上がった8名のみが、「ナイン」と対戦する権利を得る・・・言わばナインはシード選手の様な扱いなのだが、それにしても不自然な程に「上位ランカーが保護されて」いる体制である 「ゆらぎ」 神姫の個体差 神姫が身長15センチの人間として作られた以上、同じタイプでも身体能力、性格等にある程度の個性が存在し、製造段階でそういったものが発現する様に、神姫の設計にはある程度のファジーさが設けられている 必ずしも戦闘向きの能力が突出しているとも限らないが、「悪い癖」にあたるゆらぎを減少させる修行、「タクティカルアドバンテージ」にあたるゆらぎを伸ばす修行を行なった神姫は、それだけで結構な強さを発揮する事がある 以上の事から、神姫自身の持って産まれた「資質」そのものを「ゆらぎ」と呼ぶのは明らかに間違った用法なのだが、本作ではその様な表現が多用される 「オップファー」 ドイツの銃器メーカー。神姫用ではなく、普通の拳銃を主に手掛けている エルゴノミクスデザインの優美なデザインのハンドガンが有名で、代表作は.40口径ダブルカァラムの「G40」や、その小型版で、380ACP仕様の「G380d」 「ホーダーアームズ」 東杜田技研の様な、本来人間用のモノを神姫サイズにダウンサイジングしているメーカーのひとつ 主に銃器を手掛けており、12分の1「パイソン」や「エボニー アイボリー」等、実銃フィクションを問わずにやっているようだ 神姫の拳銃は本来、形はリボルバーでもオートマチックでも、使用する弾は変わらない(とどこかの設定でみた)のだが、ホーダーは12分の1「.45ACP弾」とか12分の1「5.56mmコンパクト弾」とか、訳の判らない拘りの元にモノを作っている様だ ニビル達がここの銃を愛用している 「鬼奏(キソウ)」 神浦琥珀作の刀剣を扱っている、神姫用の刃物専門店 経営は実質琥珀の家族が行っているといわれるが、その姿を見た者は居ない(いつも琥珀が店番で、居ない時は閉まっている) ルートは不明だが、世界中の殆どの(神姫用)実刀剣が手に入ると豪語する 琥珀作の刀剣は、彼女にコネが無いのであれば(あっても達成値が足りなければw)正規ルートではここで展示してある一振りずつしか手に入らない クイントスはここで武器を打って貰う事が多い様だ 現在の琥珀作品の在庫状況はこちらから 「オーバーロード」 通常では持ち得ない何らかの超常的能力を備えた神姫、またはその能力妄想神姫 通常、能力に見合った『何か』の代償もかかえており徒然続く、そんな話。 「ゆらぎ」の強烈なものというには過ぎた代物である事が多く(というよりも、「ゆらぎ」の範疇であるものは「オーバーロード」とは呼ばれないだろうが・・・)本作ではしばしば「異能力」等とも表記される事になる 華墨の脚力はオーバーロードではないが、「オーバーロード」の神姫も本作には登場する 「Gアーム」 某正義のヒーローでも、黒光りする昆虫でもない、言わば第3の「G」で現される何かw その力を使った強化武装である 武装と言っても武器の形をしているとは限らない キャロとクイントスの因縁の源、「槙縞ランキング」の真の目的、「バニシングフォー」の秘密・・・いずれのピースとしても非常に重要 「バニシングフォー」 本編第壱幕以前に、マスター共々消息不明になった四体の武装神姫 うち3体は「ナイン」であり、さらにその内2体は所謂「ランキング黎明期のランカー」である 槙縞玩具店では公然の秘密というか、タブー視されている いずれも、「槙縞ランキングチャンピオンカップ争奪戦」の開催中、開催後に消息を絶っている 「人形遣い」 神姫を素体のまま操り、相手を倒すという伝説のマスター レギュレーションから考えると本来不可能な筈なので、都市伝説の一種であろうと推測されるが・・・ 剣は紅い花の誇りTOP?
https://w.atwiki.jp/busosodo/pages/103.html
【武装神姫】セッション1-1【SW2.0】 http //www.nicovideo.jp/watch/sm17995262
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2784.html
10ページ目『お前は誰だ』 姫乃がまどろみから覚めた時には、タクシーは総合病院のロータリーに入っていた。不意に胸がズキリと痛んでも、手や頭を動かすことすら億劫でどうしようもない。代わりに目を動かすと、隣に座っている弧域が「付いたぞ姫乃、もう少しの辛抱だからな」とささやいたところだった。 「病院? ……あれ、私いつから寝て……」 「ああ起きてくれたか、よかった。射美まで寝てるから二人とも背負わなきゃいけないとこだった」 姫乃が膝下を見ると、自分の太股を枕にした射美の頭があった。頭の重さがそのまま射美に預けられている信頼の重さのように感じた。タクシーから降りて射美を背負った弧域と、弧域の腕につかまった姫乃、三人が入ったロビーには長椅子が並んでいて、ちらほらと年寄りが座っていた。廊下に続く床には数本の電子回路のような線が引いてあって、患者や見舞いらしき人々がそれに従い、あるいはそれに気を向けることもなく歩いていく。線は色分けされていて、正しい色の線を辿っていけば広い院内でも迷わずにすむ。姫乃が座った位置からでは、それらの線がどこに向かっているのかはまったく見えなかった。 弧域が受付に行っている間、座って待っていた姫乃の胸に再び痛みが走った。全力で走った時のような苦しさとは違う、より直接的で鋭い痛み。タクシーに乗るまでにどこかにぶつけたのだろうと服の下に手を入れると、中はべっとりと湿っていた。熱があるのだから汗をかいて当然と軽く考え、痛みのある場所を押さえてみるとやはりズキリと痛む。しかしパジャマにカーディガン、それに弧域が羽織らせたらしいコートの上からではその傷が何なのかは分からなかった。 受付を済ませた弧域が戻ってきた。 「あと20分くらいで診察できるってよ。空いててよかった」 「ほんとねぇ。服の中が汗びっしょりだから、早く帰って着替えたい」 そう言って姫乃は服の中から手を抜いた。その手を丁度近くを通りかかった若い女性の看護師が見咎めて飛んできた。汗ではなく血で一面濡れた手に一番のショックを受けたのは姫乃で、弧域と看護師に支えられなければ椅子から転げ落ちていたところだった。 入院の必要はないとオッサン医師に言われた時、弧域は反発したが、ボロアパートに戻ると姫乃は部屋の前で大きな欠伸ができるほど、落ち着きを取り戻していた。しかし全身にまとわりつくような気だるさはそのままだった。姫乃は胸に張り付けられたガーゼが剥がれないように、もう何度目になるかしっかりと押さえつけた。 「ごめんね、いろいろ迷惑かけちゃって。射美ちゃんもありがとうね」 「いいからママは早く寝なきゃダメ。あたしが見張ってるからね、起きちゃダメだからね」 「射美はこっちの部屋だ。ママは今は一人でぐっすり寝ないといけないからな」 目が覚めたら軽くでもいいから何か食べるよう言い残して、弧域と射美は姫乃と別れた。 「さて……次の問題はこっちだな」 「何かあるの?」 「エルのことだ。思い出したはいいけど、神姫の存在を忘れてたってのはどういうことだ?」 ホムラ達が戦っている間、弧域は大学にいた。姫乃の言いつけどおり真面目に講義を受けていたところだったが、アマティがエルを殴り倒すと同時にエルのことを、またオートマタとして動く神姫のことを思い出した。近くに座っていた貞方と鉄子に神姫のことを尋ねたのだが、 「は? 動くってあの武装神姫が? お前さっきまでノート取ってたけど、寝てたのか」 「昨日傘姫が同じこと言って、『姫乃がおかしくなった!』って電話してきたんはあんたやないね。二人してどうしたんよ」 二人とも一分前の弧域同様、動くフィギュアのことなど知らなかった。講義を抜け出して帰宅すると丁度、弧域の部屋の扉から4体の神姫が出てきたところだった。 「マ、マスター…………違うんです! 私は姫乃さんのことを悪く思ってなんかいないんです! ホントなんです信じてください!」 「表ではニボシ食わぬ顔しておきながら、裏ではマスターの恋人暗殺を目論む愛憎劇! どうにゃ、ワガハイが監督やってやるから映画とか作らにゃいか」 「ああっ、丁度いいところに姫乃さんの彼氏さん、姫乃さんが危ないんです!」 「おい、あまり煽るな。ただ風邪をこじらせただけだろ」 この時弧域は初めて、姫乃の部屋に踏み入った。このボロアパートに引っ越してきてから三年が経とうとする今まで、一度も侵入を許可されたことのなかった姫乃の聖地。弧域は姫乃の意思を汲んだのか、なるべく部屋の中を見ないようにして、布団の中でガタガタと震える姫乃にコートを着せてタクシーを呼んだ。どうしても見過ごせなかった【モノ】については、姫乃の体調が回復してから厳しく追及することにした。 弧域は、姫乃の部屋の扉が閉まるのを確認した後で射美に問うた。 「姫乃が言ってたとおり、神姫はただのフィギュアじゃない」 「そうだね」 「ほぼ同じ頃、射美が俺達の前に現れた」 「パパとママの子供だからね」 「射美はフィギュア化事件のことを知っていた」 「知ってるね。あたしもイルミなんだし」 「怒らないから正直に教えてくれ。ぶっちゃけ黒幕だろ」 「分かんない。ほら、早く中入ろうよパパ、寒い寒いよー」 逃げるように弧域の部屋の扉を開けて中に入っていく射美。弧域もそれに続いた。 姫乃を病院に連れて行った時からずっとそうしていたのか、部屋の隅でエルは膝を抱えて縮こまっていた。ブロンドの長い髪が腕にかかり、ぐずぐずな顔を覆い隠している。事ある毎にそうやって落ち込むエルの姿を懐かしむように、弧域は苦笑をこぼした。 「なに落ち込んでるんだエル、せっかくフィギュアから――」 「あの神姫を信用しちゃダメだよパパ。ママを殺そうとしたんだから」 聞いていたエルは肩をビクッと震わせたが、頭を上げて言い返そうとはしなかった。 「あたしが鉄砲でバーンってやってママを助けたんだから」 弧域は机の上に放置されているエルの短剣三本を見つけて手に取った。忍刀を改造したそれは三本とも同じ場所で折れていて、もう使い物にならない。 弧域と射美が部屋着(射美は弧域のダボダボのジャージを着た)に着替えて二人で電気ストーブに手足をかざしながら落ち着いてから、ゆっくりと頭を上げて立ち上がったエルは、何かを決意したように、まっすぐ自分のクレイドルに向かった。そしてクレイドルに座って、目をつむった。 「私をリセットしてください、マスター」 すべてを諦めたような声だった。 「イルミ姉さんと初めて戦って、姫乃さんと握手した日から、姫乃さんのことを悪く思ったことはありませんでした。……ない、つもりでした。それが嘘だって、私も知らない本心が姫乃さんのことを憎んでたって分かっちゃったらもう、マスターの側にいられません。リセットしたら、私のことは捨ててください。新しく目覚めた私もきっと、マスターのことを心から好きになって、姫乃さんのことを心の奥底から憎みますから」 「…………」 「一思いにやっちゃってください。お別れの挨拶は……つらいだけですから」 「待て待て早まるな。小さい子の前でそんなこと言うなや、トラウマになったらどうすんだ」 エルのことをじっと見つめる射美を自分のほうに向かせた弧域は、まだ重い物を背負わせるにはあまりに華奢な両肩に手を置いた。 「なぁ射美。ママはエルとケンカしたことがあるんだけど、ちゃんと仲直りしたぞ。射美も良い子だからできるよな?」 「嘘。じゃあどうやって仲直りしたの?」 「握手して、デコピンして、それでおしまいだ。後でママが起きたら聞いてみるといい、ホントだぞ」 しばらく納得がいかないという風に弧域とエルを交互に見つめ、その後で壁越しに、今はベッドの上にいるはずの姫乃に視線を向けた射美は「……分かった。パパがそう言うなら、そうする」と、渋々が半分、弧域への信頼半分といった感じで頷いた。 「待ってください! そういう問題じゃなくて、私はもう――!」 エルを無理やり黙らせるように、弧域は15cm程度の体を右手で鷲掴んだ。そしてエルの首から上だけを射美に差し出した。黒ひげ危機一発ならぬ戦乙女危機一発。 まだ完全に納得しかねる様子の射美だったが「ママも仲直りした」とあらば、それを真似しないわけにはいかない。素振りを始めた右人差し指はビッ! ビッ! と鋭く空気を切り裂いた。 「な、なんかこの子、手加減しなさそうなんですけど……っていうかマスターその前に説明してください! この子どちら様ですか! すんごく姫乃さんに似てますけど、隠し子がいたなんて聞いてないです!」 「あー、デコピンの後で説明するから」 「説明聞く前に頭が吹き飛びそうなんですけど!?」 「さっきはリセットされる覚悟してたじゃない。心配しないでエル、もし頭が取れちゃったらパパが新しいの買ってくれるから」 「これがゆとり脳ってやつですか!? どんな教育方針ですかマスター! 最近の親は命の尊さも教えないんですか! 私の顔はアンパンですか! 顔を取り替えたら元気100倍ですか!」 「なんのためーにーうーまれてー」 「なにをして いきるのか?」 「こたえられーなーいーなんてー」 「そーんなのーはー」 「「 I ☆ YA ☆ DA 」」 「二人とも絶対間違ってます! アタマ吹っ飛ばす時に歌う歌じゃないです!」 「じゃあいくよパパ、しっかり押さえててね」 「おう、外すなよ」 「嫌です! 前言撤回ですまだ死にたくないです! い、いやーーーーっ!!」 勿論。 容赦のない姫乃と違って射美のデコピンは、力を抜いてエルの前髪を少し揺らした程度だった。ただ、中指に力をこめたまま暫くエルの前で留めて無駄に怖がらせたあたり、どこか母親に通じるものがあった。 「なるほど、イルミ姉さんでもある射美ちゃん……ん~、サッパリ分かりませんが、警察とかに頼るのはやめたほうがいいと思います。たぶん捜査して分かる範疇を超えてますよ」 「えへへ」 「褒めてな……いえ、褒めざるを得ないですね。おかげで姫乃さんを大変な目にあわせなくて助かったんですけど、神姫でもこんな芸当ができるのはマシロ姉さんクラスじゃないと無理ですから」 じっくりと眺めていた折られた刃をそばに置いたエルは、右手の親指と人差し指を立てて銃の形に作り、ベッドに座った弧域と射美に向けて「バーン」と撃った。それを受けて「あうっ!」と胸を押さえて倒れたノリの良い射美とは対照的に、弧域の表情は固いままだった。 「仮にマスターが射美ちゃんの普通じゃない部分をバッチリ説明できたとしても、理解はしてもらえないはずです。そして理解できないものは偶然、もしくはマスターの見間違いだって切り捨てられて、残るものは『記憶喪失の女の子』と『白昼夢の中で動く人形』だけです。やましいことのないマスターや姫乃さんにとって不利になるだけです」 「やっぱそうだよなぁ。自分達で解決するしかないのか……」 「いいじゃない、ずっと三人一緒に暮らそうよ。あ、エルも入れてあげるからね」 「どーせ神姫はペットみたいなもんですよーだ」 「だめだ」と弧域は断固とした口調で言った。 「こんな戸籍すら不明な状態で成長させられるか。お前くらいの子供が学校に通わなくてどうする」 弧域は自分の子供の頃を思い返しても、あまり真面目に勉強をこなしてきた覚えはなかった。彼の考える当たり前の子供のように宿題をこなして、あるいはサボりもした。試験前になれば徹夜もしたし、模試の結果が思うように出なければ悩みもした。最低限、授業に付いて行けなくなることはなく、やるべきことをそれなりにやったというだけで、特別なことはしていない。姫乃と鉄子に勉強を教え(ようとし)ていたが、彼もまた鉄子と同じように成り行きに身を任せていただけだった。しかしそれが本当に大切なことだと分かったのは、週に一時間だけの中学三年の子供を相手とする家庭教師を初めてからのことだった。小学校や中学校の教師達は教室内で計算ドリルなどを振りかざし「勉強は積み重ねだ」の短い言葉ひとつにあまりに重要な意味を込め過ぎ、何をどう積み重ねるのかを説明しなかった。弧域は教え子を前にした時、そんな教師達を殴りたくなった。何故もっと分かりやすく子供たちに理解させてやらなかったのか。早熟で聡明な子供は選ばれた道へと別れていき、勤勉な子供はステージを義務教育の上へ移していく段階を重ねて意味を知ることになる。では義務教育の最後の一年を迎えても未だ四則演算を満足に行なってくれない子供は? 分数を約分することを覚えてくれない子供は? そんな子供にどうやってルート記号の意味を教えればよいというのか? 弧域にも「勉強は積み重ねだ」を分かりやすく説明することはできない。教え子に説明を試みたこともあったが返事すらしてくれなかった(どころか半年以上過ぎた今でも挨拶の言葉すら聞いたことがない。ギャグを言ったら「グフッ!」とくぐもった声で笑うだけの、今思い返せばいろいろ残念な子だったなあとは作者の談)。しかし、その状況に甘んじていては確実に子供がダメになる。子供の何がどういった風にダメになるのかは大いに偏見が混じるため明記を避けるが、とにかくダメになる。姫乃と同じ顔をした少女がダメになる姿を、弧域は想像ですら許せなかった。 「いいな、勉強は必須だ。後で射美の教育レベルを測るからそのつもりで」 「やーだー。勉強やーだー」 「つべこべ言うな。あんまり成績悪いとママに言いつけるぞ」 「マスター、いろいろ考えてるとこにごめんなさいですけど、神姫のことも忘れないでもらえると嬉しいです。おしゃべりできたり戦ったりできる神姫が世界中で手の指で数えるくらいしかいないのは寂しいです」 そうエルが頼み込んだ、その時。 「分かるにゃあその気持ち。一匹狼ならぬ一匹猫のワガハイもたまには101匹マオチャオズと戯れたくなるもんにゃあ」 弧域たち三人が驚いて振り向いた先、ベランダの窓はいつの間にか開け放たれていて、縁によりかかったカグラは腕を組んで意味ありげに頷いていた。アマティとホムラの姿はない。タバコをどこからか取り出して口に咥え、ライターで火を着けて一服して、おもいっきりむせた。 「げえっほっ!? ぉえっ、ごっほおっ! ほ、ほむほむのやつ騙しやがったにゃ! マタタビヂェリー染みこませても茶葉がタバコになるわけあるかにゃ!」 ベランダに叩きつけるように捨てられたタバコ(?)はカグラの肉球付きの足で何度も踏みつけられた。息を荒げたカグラは弧域達の冷めた視線に気づくと慌てて取り繕い、再び腕を組んでニヒルなポーズをとった。 「そこのロリ娘のことでお困りですかにゃ? おおっと言わなくても分かってるにゃよ、オマエタチにはアイディーアが無いんにゃろ。そこでにゃ。ここはひとつ、ワガハイに協力しにゃいか。ロリ娘と神姫フィギュア化事件、一緒に解決できるかもしれにゃいぜ」 ■キャラ紹介(10) ハナコ 【多方性戦術兵器パンドラ試作型】 《1》武装神姫の装備数についての考察 一般的に、神姫が搭載する武装(任意起動させるタイプ)の数は、攻撃・防御・機動などを合わせて3~6つが適当とされている。 2つ以下では対応不可な状況の発生確率が跳ね上がり、また7つ以上の装備を用意してもバトルで一度も使用することのない余計な荷物になりがちであるのが根拠である。 素体に固定される装甲など非可動的な武装については別途検討が必要であることを始めに断っておく。 また、一部の狂った性能の神姫(例えばこの界隈の『デウス・エクス・マキナ』に分類されるような強さを持つ神姫)などには当てはまらない、あくまで基本的な考察であることも付け加えなければならない。 他にも数多の例外があることも、少々言い訳じみてはいるが認める。 これはあくまで一般的な見解である。 また、これは例外の中から発見した事柄だが、武装神姫バトルにおけるすべての戦術は大きく12に分けることができることについても言及したい。 以下、武装の数を少ない方から順に個別に検討していく。 《2》武装数;0の場合 素体のまま、または素体各部のアーマーのみとなる。 神姫がカラテマスターか何かでもない限り勝利はあり得ない。 それでなければ、非暴力・不服従のガンジースタイルで相手を精神的に追い詰めてサレンダーさせるくらいだろうか。 時折、回避行動やバトル中の恐怖心を克服するための特訓として非武装でバトルをさせるオーナーを見かけるが、ほとんどの場合、神姫にトラウマを植え付けるだけの逆効果に終わることは MMS 2nd 素体の登場前から各メーカーより警告されている。 《3》武装数;1の場合 これも武装数;0の場合と同様に誤解されやすいのだが、例えば剣術の練習として大剣一本だけ持ってバトルに臨んでも成果はあまり期待できない。 そもそも武装神姫のAIは初期状態からある程度の戦闘能力を持たされているため、よほど性格的に不得意な武装でない限り最低限の運用水準は満たされている。 よって武装ごとに個別に特訓時間を割くよりも状況に応じた複数の武装の扱いに慣れるほうが優先されるべきであり、その中で各武装の運用精度が自然と向上していくのが最も望ましいトレーニングといえる。 また別の例として、歴戦の強者が槍一本のみ担いでバトルに臨むなどといった光景も見受けられるが、褒められた行為ではないと言わざるをえない。 何故ならその手の神姫が勝利する場合は決まって相手が明らかな格下であり、また敗北する場合は刃がまるで届かなかったり弾が当たらないなど『詰み』状態となって得られるものが何一つないからである。 仮に単一の武器に固執してなお強者相手に勝利を重ねることができる神姫がいたとしたら、それは明らかな才能の無駄遣いであり、+αで何かしらの武装を追加装備したほうが強くなると断言できる。 そして何より、見るからに軽い武装は入念な用意をした相手を不愉快にさせ、俗に云う『舐めプレイ』と受け取られる可能性が非常に高い。 唯一の武器に固執した神姫にその気がなくとも、相手がそれを見てどう受け止めるかを考慮するのはバトルのマナーとして覚えておかねばならない。 4人の『デウス・エクス・マキナ』の中で最も温厚、寛容かつ正義感に富む『大魔法少女』アリベがハンマー一本を担いだ愚かなストラーフに挑発され、怒り狂って即サレンダー、筐体の外に出てストラーフを消し炭にした事件が最たる例である。 自分や相手のためにも、武装は複数用意すべきである。 《4》武装数;2の場合 駈け出し神姫、または現在流行しているライトアーマークラスに多いタイプである。 武装の組み合わせとしてはおおよそ以下の場合になる。 1.攻撃+防御 2.攻撃+機動 3.攻撃+攻撃 4.防御+機動 これらがあればバトルにおける最低限の行動を取ることができる。 どの構成を選ぶかは神姫とオーナーの好みになるが、注意すべきことは攻撃手段である。 機動力の低い神姫がナイフで接近戦を挑んだり、射撃の才能がまるっきり無い神姫がハンドガンを構えることなどに意味が無いのは当然である。 とにかく、相手に確実にダメージを与えられる攻撃武装を選ばなければならない。 しかし、先に列挙した例のうち一見して無難そうな1番と2番について考えてみれば分かるが、数多く存在する武器の中から「コレだ!」とひとつ選ぶのは難しい。 刃物は相手に届かなければただの棒。 銃器は弾薬が切れてしまえばただの重り。 爆発物に至っては相手に当たらなければ汚い花火だ。 他にも多種多様な武器があり、それぞれ一長一短がある。 そこで3番と4番に注目したい。 まず3番は、よほど偏った武器を選ばない限り、バトル中に何もできなくなる状況を(武器0,1つの場合と比較して)減らすことができる。 最近、衝撃的な登場で話題となっている『ドールマスター』コタマは参考例としては極端すぎるが、近距離用・遠距離用の人形を駆使してどの距離でも万能に戦える理想的な神姫だ。 次に4番だが、これは人間でいうところの車両事故、つまり装甲と機動力に任せた体当たりを武器とする。 原始的に思えるが、1~4番の中で最も相手にしたくないタイプは? と考えると自ずと4番になってはこないだろうか。 装甲で攻撃を弾く、または機動力で攻撃を躱して突撃する。 さながら戦車のような神姫はそう簡単には止められない。 どうだろうか、ここまで考えて「武装は2種類あればいいんだ」と考えるだろうか。 答えはNOのはずである。 3番の『ドールマスター』は基本的に人形だけで戦闘を行うが、本人まで攻撃・防御手段を持てばさらに強くならないだろうか。 4番の戦車のような神姫は、主砲を搭載すればさらに強くならないだろうか。 つまり武装数;2というのは0や1のように舐めくさったものではなく、必ずどこかに発展の余地がある数なのだ。 そのことに気づき、さらに強くなりたいと願った神姫とオーナー達が3つ以上へと武装を増やしていくのである。 《5》武装数;3~6の場合 ライトアーマーブームの前までは、ほとんどの武装神姫がこれくらいのボリュームで販売されている。 また次世代神姫として登場が発表されている戦乙女型も久々の重装備神姫であると噂されている。 (次世代神姫の登場により、長らく4人しかいなかった『デウス・エクス・マキナ』の席が増えるのではないかと、その手の情報屋は期待しているようだ) この数から武装の選択肢が爆発的に増えることとなり、ノーマル装備で戦う神姫や組み換え、改造など個性が際立ってくる。 どのような装備も神姫とオーナーそれぞれ好きなものを選べばよい。 試行錯誤を繰り返していけば自ずと「戦える神姫」になるだろう。 《6》武装数;7以上の場合 ドレスアップ目的ならばともかく、バトルにこれ以上の装備を持ち込むのは無駄だと言わざるをえない。 単純に考えても装備は増やせば増やすほど重くかさばるし、バトル中にすべてを必要とする機会など滅多にないはずである。 それに神姫も手段ばかりが増えて各装備に熟練できなければ混乱してしまうだけだ。 勿論、武装が多いのが悪いと決めつけるわけではなく、すべての武装を使いこなせれば何も問題ない。 努力次第では武装をどんどん増やすことで勝利を重ねることもできるだろう。 しかし強い神姫ほど武装の選択肢が最適化されていき、武装数が7つ未満に絞られることが多いのが事実だ。 RPGのように装備することが強さの足し算にならないところが武装神姫の醍醐味でもある。 重装備神姫の動きが鈍くなってきたと感じた時は無理にブースターなどを増やそうとせず、思い切って軽装になってみると、思いもしなかった戦術を得られるかもしれない。 ちなみに、声を大きくして言えないことだが、神姫バトル初心者を超えて一人前とされる基準の「門番」として、重装備神姫が選ばれることが多い。 ぶっちゃけると、金に物を言わせて高火力武装を持てるだけ持った神姫である。 バトル開始から弾丸、レーザー、ミサイル、ビットなどを考えなしに撒き散らすタイプが特に多く、バトル慣れしていない神姫を近づけることなく屠り勝利数を重ねるといった寸法である。 子供オーナーならば微笑ましい光景だが、いい年したオーナーであったなら見ていられない。 初心者にとっては防御・回避の良い基礎練習相手になるだろう。 また金こそパワータイプの門番は最新の武装を使ってくることが多いので、上級者ならばその性能を見極めるために相手したり、ナイフ一本を握りしめて「金」より「愛」であることを証明してやるのも面白いかもしれない。 こういった事情があるため、「門番」とはあまり良いイメージを持たれる存在ではなく、むしろ陰口のような意味で使われることが多い不名誉な称号である。 自分がそうならないよう、武装の数には気を配りたい。 《7》戦術数とその応用兵器について 様々なバトル(1対1のフリーバトル)を検証した結果、武装神姫の戦術は大きく12に分けることができる。 今後の研究に大いに関わってくることから、残念ながらそれら12の戦術を列挙するのは秘匿とさせてもらう。 一例を挙げるとすれば、『デウス・エクス・マキナ』の一人にして最も喧嘩を売りたくない相手と恐れられている『ナイツ・オブ・ラウンド』マシロが操る騎士人形の数が12だ。 相手が相手なだけに12という数字の結びつきを確認するのは難しいが、何かしらの関連性があるものと考えられる。 さらに、もし12の戦術すべてに対応できる神姫が存在すれば『最強』と呼べるのではないだろうか、とは当然の結論だろう。 12の戦術、そしてそれらを実現可能な武装を用意し熟練することで、どんな神姫でも『デウス・エクス・マキナ』クラス以上、つまり最高水準の武装神姫に手が届くと期待できる。 しかしそれでは前述した武装過多のデメリットと矛盾することになり、理論上、特別な才能(AIの特異な成長や、素体・武装の究極的なチューニングなど)のない神姫が『デウス・エクス・マキナ』クラスを相手取ることは不可能である、という消極的な結論に辿り着いてしまう。 そこで、12の戦術を一つの塊としたシステムウェポンを検討したい。 既に試作機の設計に着手しており、完成までの目処はついている。 一つの兵器としては過大な規模の武装になってしまうのが欠点だが、完成したあかつきには所持した神姫が少なくとも一目置かれるレベルの戦闘力を得ることは間違いないだろう。 兵器の名称は既に決めてある。 その兵器の武装者に銃口を向ければありとあらゆる災厄が襲い掛かってくる、というコンセプトから―― 【ハナコ先生の授業は眠い】 「[――というコンセプトから『多方性戦術兵器パンドラ』と名付ける。] 以上が私の武器の基礎らしくて……あれ?」 パンドラの取扱説明書に付属されていた資料を読み終えて顔を上げてみると、目を開いている人は誰もいませんでした。 メルはエルさんと肩を寄せ合うように仲良く眠っていて、コタマさんは私が読み始めた時から既にいびきをかいていたような気がします。 ニーキさん、マシロさんも姿勢は正しいままですが、こっくりこっくりと船を漕いでいます。 私の読み方が退屈だったのがいけないのでしょう。 皆さんに退屈な思いをさせてしまい申し訳ないです。 体を冷やさないように急いで布団を用意しないと……でも、その前に。 こうして皆さんが一緒に眠っている場面なんてなかなか出会えないですし、写真を一枚撮ってからでもバチは当たりませんよね。 次ページ『?』? 15cm程度の死闘トップへ